2022年2月26日土曜日

多国籍企業でポジションを上げるためにはMust-havesの理解が必要



最近スイスの母校の時にお世話になっていたコーチから様々なアドバイスを受け取っており、そのコーチの勧めでWinter Nieという教授のRethinking theEast AsianLeadership Gapという記事を読んでいました。ざっくりとした記事の内容としては、欧米の多国籍企業においてはシニアマネジメントに上がっていくための必要な条件が決まりすぎていて、その条件が東アジアの文化面と大きく異なっているため会社側はその条件を少し外していくべきという内容でした。

この記事自体はボスや大ボスに対して送りつけて読んでもらうとして、それとは別に現実今S&P500等の大規模な多国籍企業で働くミドルマネジメントとしてどういった事ができるかについて書いてみようと思います。

多くの企業において、Leadership Pipelineと呼ばれる人材のパイプラインを用意していて、将来のleadershipの候補者に対しては適切なチャレンジや機会を与えてより引き上げていく事が多いです。以前大ボスとどういう話をすべきかという記事にも少し書きました。その人材育成のプロセスで大切なものになってくるのがMust-haves、つまりシニアマネジメントとして兼ね備えているべき条件たちです。

こういった条件はなかなか一般に公開されていないのですが、マネージャーとしてのMust-havesやその少し上くらいまでだったら公開されている事が多いと思います。何か突出して強みを持つ事は大切ですが、その条件の中で弱みがない事も、最後の候補者くらいになって排除されないために大切です。その公開されていない条件に対して、ボスや大ボスやもしくはさらに上のシニアマネジメントのクラスまで話をしてどういった条件があるのかアドバイスをしてそういった公開されていない情報についてアクセスしてみるようにしましょう。

例えばR&Dが大切な企業にとってはR&D寄りのマーケティングを経験している事が大切だったりM&Aが頻繁に行われる会社の場合はM&AプロジェクトやPMIの経験が大切だったりします。その辺を言語化されている場合は入手、言語化されていなければ対話から見つけ出す事が大切です。

また、そろそろエグゼクティブ・サーチと呼ばれるCXOの採用を主に担当してきた人たちと話をできる段階かと思うので、そういった人たちと話をして自社だけでなく一般的な条件を聞いて切り替えができるかもしれない準備をしておくこともおすすめします。

こういう書かれていないルールをちゃんと理解して進むことが大切だと思っていますっていう話を書いてみました。

2022年2月19日土曜日

機械翻訳により、英語の価値が下がり言語に依存しない付加価値が重要になる


最近初めて、発展したWebミーティング内蔵の字幕翻訳機能やDeepL等の機械翻訳を見る機会があったのですが、思ったより性能が高くて、ちょっと思ったことを書いてみようかと思います。とは言え、実際自分がアクティブに使っているかと言うと、全く使っていないので少し的外れかもしれません。また今回の議論からプロフェッショナルである通訳の方は前提から排除しています。特に通訳の方は言語能力とは大きく違った特殊なスキルだと思っているので。


まず大変単純にするために、付加価値と英語の能力の二つの軸で整理してみます。環境によっては、そもそも言語が話せない人に付加価値はないのですが、それぞれ独立していると仮定します。また、大きくは日本での労働環境だと思ってくれて構いません。

縦軸: 仕事の付加価値に関してはあくまでグラデーションなのですが、言語に依存しないスキルでスペシャリストを前提として書いています。なぜなら言語ができない人にマネジメントは基本的に難しいからです。

横軸:初級、中級、上級とレベルに分けていますが、自分の定義は下記くらいなイメージで書いています。

  • 初級:時間をかければ理解できる。もしくはそれもできない。TOEIC満点未満。
  • 中級:リアルタイムで感情にまで影響を及ぼさない取引の議論ができる。TOEFL満点未満。海外経験のない状態で社会人留学をしたくらいのイメージ。
  • 上級:感情面を含んで議論交渉をし、組織を鼓舞し動かすことができる。

各セグメントにおける変化

1: 英語ができないけれども専門家としてスキルのある人により脚光が当たる日が来ます。なぜなら、言語によって良くも悪くも守られていた市場が開き、世界中で良い人材を探すようになるからです。

2: 英語によって盛られていた価値が消える分少し減ります。

3: 英語も専門的なスキルも両方あるため変化はないです。

4: 英語によって多くの付加価値を産んできたため、著しく付加価値が下がります。機械化されることで同じ社内で単純に給与を下げることは難しいので、部署異動、解雇等が起こるでしょう。

大きく言いたいこと

  • 機械翻訳の発展により議論や交渉で十分価値を出せてようやく価値が出る世の中が来る
  • 機械翻訳の十分な発達が5年か10年先か分からないもののそれまでにキャリア上失う機会が多い人は英語を勉強すべき
  • 語学的な能力が著しく低い人や特別な付加価値がある人は語学にリソースを振らない事も十分意味がある可能性がある
  • ただし多国籍なチームをマネジメントする人は、言葉の選び方一つ一つが付加価値につながるので、引き続き高いレベルでの言語はスタートラインに立つ上で必要がある


2022年2月12日土曜日

高い給与=厳しい労働環境は大きな勘違い

先日何かのTweetで残業が多いけれど年収が高い仕事と残業は少ないものの年収が低い仕事のどちらが良いかというかというアンケートが流れてきて、いやいやそもそもそこトレードオフじゃないだろと思ったのですが、多くの人がそのトレードオフを認識しているようだったので、ちょっとそれはなぜなのかという事について考えて整理してみる事にしました。

0 前提
記事を短く書くために、賃金は生産能力によって規定されると大きく仮定を置きます。本当は業界の利益率だったり、被雇用者と雇用者の交渉力だったりによって大きく変わって来ると思うんですが、その辺りも含めて生産能力が一番大きい要因として整理をします。また、その考えそのものは、賃金はどのように決まるのか - 労働政策研究・研修機構 佐々木 勝(大阪大学准教授)を参考に書いています。

1 生産能力は個人の能力とレバレッジの掛け算
生産能力と言っても人は一人で生きている訳ではないので、多くの場合人に対して影響を与えて生産をしています。ただ、社会人最初の頃だったり、時間と価値が完全相関するような仕事をしている場合は、レバレッジが効いていないので自分自身の行動だけが生産能力になります。そうすると10時間働いている人が18時間働けるようになって二倍くらいまで生産能力が上がったとしてもつらい環境だしその辺で頭打ちです。

2 レバレッジのかける方向性はいくつもある
レバレッジといってもいろいろな方法があって例えば
  • リーダーとして組織を動かし数百人の団体として生産能力を上げる
  • 専門知識や優れたインサイトにより大きな組織を動かし生産能力を上げる
  • 資本の力を使って、より多くの人を動かしたり設備投資の結果生産能力を上げる
等が例として挙げられると思います。そうするとあくまで生産能力が上がれば良いので、別にその人の労働時間なんてあまり関係がなくなります。つまり極論をすると人や組織を引っ張れるのであれば、一日一時間だけ働いて必要な生産能力を発揮する事も十分可能です。

3 レバレッジを意識しないと泥沼
人間個人の能力というのは多くの場合少しずつ下がっていきます。体力もなくなり、筋肉も衰え、頭の回転も遅くなり、記憶力も悪くなっていきます。そうすると、個人のレバレッジの効かないがむしゃらで乗り越えてきた人はレバレッジをどうかけて良いか分からず、もう誰も色々と教えてくれないくらい経験や年齢を重ねてしまう事になります。

4 結局被雇用者はマネジメントかスペシャリストの方向性しかない
といつもと同じような結論になってしまうのですが、レバレッジをかけていこうと考えるとマネジメントとなって人や組織を動かしていくか、スペシャリストとなって専門知識やインサイトで示唆を出し組織を動かしていくしかなくなります。なので、どちらの方向に行きたいのかは早く自分で腹をくくって決める必要があります。

2022年2月5日土曜日

可能な限りポジションを上げない方が良い場合



先週、ポジションと給料は早く上げまくれっていう主旨の記事を書いたのですが、少しコメント等を頂いて、いくつか例外とする場合があるなと思ったので、それについてまとめておこうかと思います。ただし、今回の件に関してはポジションに関してだけで給与は上げられるなら、上げておいた方が良いと思います。

1. 特定企業や業界の経験がマイナスに繋がる場合

まずいきなり特例なのですが、例えばタバコ業界など非常に給与が高いポジションを提供してくる企業があります。そういった企業の製品と異なる倫理観のある業界に行こうとした時に少し制約が出て来る事があると思います。そこはちゃんと見積もってリスクとメリットを見積もった方が良いと思います。また、最近だと特定しての国の企業で働いた人は競争関係にある国の企業で働く際やビザを取る時に制約が出るかも?っていう事もあり得るかもしれません。

2. 職種が将来の方向性と異なっていた場合

例えば、将来は事業部長やGeneral Manager等の売上を作る方向性に行きたいのに、Corporate developmentやStrategyの部門として偉くなってしまうと、むしろ経験が限られてしまう事があります。

3.同じ業界で職種だったとしても、その企業内で横へのスライドが難しい場合

こちら本当企業によるのですが、同じ企業でのキャリアが非常に硬直的になっていて、一回キャリアパスを選んでしまうと容易に隣のパスに移りにくい場合等があります。そういった時にはどの山を登りたいのかちゃんと明確に後悔しないように見極めて選ぶ必要が出てきます。

4. 長期的により高い山を登るために多様な経験が必要だと考えている場合

例えば事業部長として、事業の立ち上げをうまく行ったとします。ただし、その人の目標がCEOになるためだった場合に、事業の立ち上げだけでなく、継続維持、売却、閉鎖、等々様々なビジネスの局面においてより小さなスケールで経験を積む必要があると判断した場合ポジションを敢えて上げない事は十分考えられます。

2022年1月29日土曜日

身の丈を知れなんて無視し、可能な限り早くポジションと給与を上げる事が大切



以前、Twitterで転職でより高いポジションで入れる事があったとしても、いかに長期的に成長できることが大切なので低いポジションから始めるべきみたいな主張を見かけた事があって、それについてちょっと思うところを書いておきます。(実はTwitterでさくっと検索してみたものの見つからなくて、藁人形を叩いている人の気分に少しなっています笑)

Twitterにも書いたのですが、ハイレベルとしてはこんな事を思ってます。
  1. 給与は%で上がる事が多いので、複利の効果が高い
  2. ポジションが人を育てるので、早く上がった方が良い
  3. 準備ができるタイミングなんて存在しない
  4. 誰かが上げると意思決定したらポテンシャル含めて評価は十分

1. 給与は%で上がる事が多いので、複利の効果が高い
同じ15%給与が上昇すると考えても複利の効果を考えると、長期的には大きな差になります。それに給与が決まる時は転職でも昇進でも本当一部の場合を除いて、現在もしくは過去もらっていた給与をベースにオファーが出る事が多いです。なので、現在もらっておく事は大きく価値があります。また若いうちに手に入れた100万円は自分や株式に投資したりする事で将来へのリターンも大きく異なってきます。

2. ポジションが人を育てるので、早く上がった方が良い
こちらは本当考え方なのですが、特にIndependent contributorからPeople managerだったりといったような質的に仕事の変化がある時は、実際にその仕事をして、失敗して、学んでって経験をして育って行く方が圧倒的に早いです。

3. 準備ができるタイミングなんて存在しない
じゃあ事前に準備をしておけばもっとスムーズにって思うかもしれないですが、その立場に立たずに自分ごととして捉えて準備をする事は相当難しく、いくら準備をしたところでどこで満足するかは自分の決めの問題です。むしろ、どういった状況でも大丈夫と信じられるほどの自分への信頼を獲得する事が大切だと思います。

4. 誰かが上げると意思決定したらポテンシャル含めて評価は十分
こちら少しコメントをもらったのですが、昇進なりポジションを上げての転職が選択肢としてあり得るっていう事は誰かが承認しているという事です。多くの場合、その承認者にとってあなたが成功する事はその承認者の成功であるわけで、彼ら、彼女らもリスクを取って提案をしています。つまりは承認されている時点で、ポテンシャルや成長速度の期待も含めてきっと大丈夫だろうと信じているという事です。自分自身への評価って難しいですよね?信頼できるボスの評価を信じて飛び込んでみるっていうのもありかもしれないですよね。

ではでは

2022年1月22日土曜日

チームメンバーとの1 on 1で何を話すのか

 

多くの企業で行っていると思う1 on 1なのですが、自分自身も新卒の時からマネージャーとの1 on 1が定期的にある仕事をしてきていました。数多くのマネージャーと働いてきた中で、1 on 1をする際に色々と気をつける事があって、それについて今思っている事をまとめておこうと思います。

大切な事は大きく4つ考えています

  1. WLBと仕事以外の状況はどうか確認する
  2. 困っている事を聞く
  3. 仕事の話を相手の力量と状況に合わせて議論する
  4. 大切にして欲しい価値観、ビジョン、チームメンバーに成功して欲しい事を伝える
と書くと大変簡単なのですが、1 on 1というと仕事の進捗を話してしまいがちになるところを一歩引いて、チームメンバーが心理的安全性を持ってもらって働く事を最終的な大きな目的としています。具体的な仕事の内容は必要があればトピックごとにミーティングを別途設定すれば良いと思っているからというのもあります。一つ一つ理由を説明していくと
1. WLBと仕事以外の状況はどうか確認する
仕事に取り組むためには仕事以外に問題がないことが理想です。ただし、仕事だけに集中できる期間というのはあまり多くないため、働いている時間は問題ないか、(本人が話す事に関して問題なければ)家族や健康状態はどうか等を聞いて確認をします。こういった問題は意外と切り出しにくいのでこちらから確認するようにしています。


2. 困っている事を聞く
次にこちらの話したい内容とは別に何か困っている事がないかをオープンな質問で確認していきます。それによって、相手に考えてもらい、言いたいけど言えなかったという状況を回避しやすいと思うからです。ただ、こういうのってただ聞くだけじゃなくてこの人に相談して意味があるとか聞いてくれるとか価値があるとか問題がないとか思ってもらえないと難しいので言うのは簡単ですが、実践は難しいと思います。

3. 仕事の話を相手の力量と状況に合わせて議論する
次に実際に仕事の話をしていくのですが、以前の記事で書いたようにSituational leadership等であるようなフレームワークを使って仕事の状況や相手の力量によってどの程度まで具体的に踏み込むかを決めて踏み込んでいきます。

4. 大切にして欲しい価値観、ビジョン、チームメンバーに成功して欲しい事を伝える
会社の文化を浸透させる事は本当簡単な事ではないのですが、ビジョンや価値観を何度も会話の中に出したり、意思決定の基準として使ったりしていきます。また、最後にチームメンバーに成功して欲しい事を伝えて心理的安全性を最後に高めていきます。

とこうやって書いてみると簡単な話なのですが、心から信じてもらえるためにはもっと多くの準備や普段からの言動が大切になってくるのでその要素についても後々触れられたらなと思います。

2022年1月15日土曜日

大きくなり続けるプレッシャーにどう対応していくのか

 

ちょこっと質問箱にも質問をもらっていたのですが、仕事で結果を出せば出すほどプレッシャーや解決しなければいけない問題は大きく、数も増えていきます。例えば自分の場合、現在25の代理店と11カ国に渡って仕事をしていて、直接自分にレポートするスタッフは八人になります。スタッフの所在地も複数の国に渡っていて常にどこかで何かの問題が起こっています。初めの頃はこういった環境に慣れるのも大変だったのですが、色々と自分なりのバランスの取り方を考えてみたので、そんな構造化せずに書いてみようかと思います。

Anticipation(想像する)

問題は常に起こるものだと思っておくようにしています。他の人たちから少し話を聞いた範囲だと、期待をしてその期待を裏切られることから落胆したりストレスが溜まったりします。なので、そこは一個考え方を変えて、そもそも問題は起こるはずだと思っておくことが良いと思います。また、もう一歩先に進んで、実際に打ち手を考えてみたら競合や顧客の立場に立ってみて実際に失敗しそうなことを想定していくと良いと思います。そうすると打ち手の質も向上していくと思います。

Recognition(認知する)

まぁとは言ってもストレスやプレッシャーというのは想像を超えて重なったり大きくなったりするものです。そういった時に色々な方法で自分の状態を認識することが大切だと思っています。7つの習慣とかをちゃんと読んで実践している人とかは自分の社会の中での役割について分解して整理していると思うのですが、そういった、親、子ども、夫、シンガポールのGM、マレーシアのGM等といった感じでそれぞれごとにどの程度の大きさの問題がいくつあるのか週に一回くらい見える化してみるのも一つの方法だと思います。または、普段ならできていること、例えば日記を書くとか、走るとか、テニスをするとか、色々なことがどのくらいできているのか認識してみることで時間的、精神的余裕が出てくると思います。

Solution(解決する)

ってな訳で自分に対してストレスがかかったことを認識したあとですが、当然解決しにいきます。解決すると言ってもいくつか方法があります。

  1. そもそも解決しない/ できない事を決める
  2. 普段からレジリエンスを高くしていく
  3. 可能な限り人に頼って解決する
1は結構大事なのですが、そもそも解決する価値があるのかどうかを判断する事が必要だと思います。悩まされているものが実は人生にとって大事じゃないとか、自分の力では解決できないって事もあると思うんです。もしそれに当てはまると判断をしたら、もう放っておく事に注力してみましょう。
2については、いくつか方法があると思っていて
  • 会社、家以外のコミュニティを持っておき居場所をいくつも持つ
  • 色々なことを忘れられる趣味を持つ(テニスとかゲームとか!)
  • 仕事以外で誰かに役に立てる場を持つ
  • 分かりやすい成果を見えるような事をしてみる
どれでも良いのですが、普段からある程度自分の中でのセーフティーネットを作っておくと良いと思います。特にCOVIDにより分断が進みつつある世の中においてはより大切だと思います。
3は私がこの五年間で特に思っている事なのですが、世の中には色々な事に関してプロがいます。そういったプロに対して対価を払って相談をする事で驚くほど問題は早く解決したりします。新卒の時に、自分が困っている事は過去誰かが困ってきているから答えは多くの場合あると言われた事はまさにそうだなと最近改めて感じています。

仕事が順調になればなるほど、大きくなっていくプレッシャーそういった事に対応していくなかでコンセプトとして自分はどう考えているのかをまとめてみました。