2020年11月29日日曜日

雇用契約における交渉 事前準備編


 最近色々な人から雇用契約における相談を受ける事が多くなったので、ちょこちょこ考えている事をまとめておこうかと思います。大学院ではSalary Negotiationっていう授業があってそれは本当有意義だったのでその内容もちょこっと入れていきます。残念ながら全ての内容を公開する事はないのですが、イメージとしては中級編くらいまでのところを書くつもりです。


という事で、今回は一回目の準備編。準備編とオファー受領後の2つに分けて書く予定です。準備編は面接を受け始める前から面接を受けている途中だと思ってください。会社によりますが、そもそも中途採用になると期待給与をフォームに書かされる会社もあると思います。

先にまとめて書いておくと

  1. 自分の中での優先順位を決める。金銭は第一優先順位とは限らない。
  2. 事前に希望ポジションの給与の目安を調べる。
  3. 意思決定者を見極め、その人と直接交渉する準備をする。
  4. 他のオプションを増やす。
  5. 契約書をレビューしてくれる人を探しておく。
順番に書いていきます。
1. 自分の中での優先順位を決める。金銭は第一優先順位とは限らない。
交渉が始まってヒートアップしてくるとついつい目先の金額が優先順位高く見えてしまう事があります。そして、あとから振り返ってみると実は大事じゃなかったなぁって事を防ぐために、何が大切なのかをリストアップすると良いと思います。例えば、P&Lの責任者になる、チームを持つ、という事に大きな価値を置いていて、そこを手に入れられるなら多少の給与カットも受け入れるという前提を置いていました。

2. 事前に希望ポジションの給与の目安を調べる。
Do your homework. と表現されてもおかしくないくらいの基本動作ですが、こちらを見てみましょう。Glassdoor, Mercer のレポート等を見ると概ねレンジが掲載されていると思います。業界の人事に友人がいたりしたら聞いてみたりとか、どういった方法でも良いので目安を知っておく必要があります。

3. 意思決定者を見極め、その人と直接交渉する準備をする。
当たり前の事なのですが、これって会社によって実は意思決定者が違うのでちゃんと見極めるようにしましょう。一般的には、Hiriing managerが決める事が多いですが、P&Lを管理する人が決めたり、Financeが関わってきたりする事があるので直接・間接的に誰が意思決定をするのかを理解しておくと良いでしょう。

4. 他のオプションを増やす。
交渉は選択肢がない方が弱いです。なので、現在の職業を含めて複数案件を走らせ同じくらいのタイミングでオファーが出揃うように調整しつつ進めるようにしましょう。多くの会社では、候補者をパイプライン的に管理していると思うので、自分もポジションをパイプライン管理しましょう。

5. 契約書をレビューしてくれる人を探しておく。
結構個人的に大切だと思うのですが、自分の雇用契約書は弁護士と人事の経験が豊富な友人に見てもらうようにしています。業界水準から著しく外れていたら指摘し修正、またその会社を辞める際に大きなトラブルにならないように事前にレビューをしてもらう事をおすすめします。

と、まぁ準備しなければいけない事はたくさんあるのですが、個人的に大切だなと思った事についてまとめておきました。次はオファーが出揃ってからのプロセスについて書きます。

2020年11月21日土曜日

型としてleadershipを学ぶ事の意味と落とし穴



最近、会社のトレーニングでSituational leadershipというトレーニングを受ける機会がありました。トレーニングの内容は、チームメンバーを本人のモチベーションの高さとその領域における能力で分類して、適切なアプローチを取っていきましょうというものでした。型としてある程度完成されたものを学んでとりあえずそれを実施していきましょうというコンセプトなのですが、大外れを防ぐ事ができるし、結構有用だなと感じています。ただ、こういった型を勉強していく中で、修正をしていく必要が二点あるなと感じたので、それについてちょっとまとめて書いておきます。


一点目は相手によって、コミュニケーションは変えるべきなので、型を毎回誰に対しても当てはめるべきではないというもの。Situational leadershipにおいては、

  • モチベーションの高さ
  • その領域における能力の高さ
を基準として分類して、アプローチを変えましょうという事でしたが、さらにそこから一歩踏み込んで、相手がどういった事にモチベーションを感じるタイプなのか、今回の仕事や状況をそれに合っているのかという点においても、もう1段踏み込んで見る必要があります。もちろん、これをトレーニングで教えようとするとパターンが大変多くなるので、トレーニングとしては現実的ではないですが、方向性は状況によって決めて、コミュニケーションは相手のタイプによって変えるというような使い分けをして、もっとカスタマイズしていく余地はあるでしょう。

2点目は、型を使いすぎる結果Authenticではなくなってしまう事に気をつけなければならない事だと思います。Alcの英辞郎によるとAuthenticとは以下のような意味なようです。
本物の、正真正銘の、真正の、真の、れっきとした~◆何かが偽物や複製されたものでないことを意味する。つまり、それまで誰も考え付かなかったようなものがoriginalで、その後似たような製品が競って作られる中で、本物の製品として君臨しているものをauthenticで表現する。
この単語はMBAでリーダーシップの授業を受ける中で頻繁に出てくる単語で、作ったものではなく心の底から出てくるものだと考えています。人によって、得意なleadershipのスタイルというものがあって、それを外すと信頼をおける人間だと思われなくなってしまい、leadershipを発揮する以前の問題になってしまいます。そういったleadershipの例としては、以下のようなものがあります。
  • オープンで言行一致している事
  • アイデアがユニークな事
  • 日々最前線を進む事
などなどこういった個人のleadershipは様々な環境や生まれ持ったもので決まっていてそれを発見していく。そのサブとして型を使っていくのが良さそうです。

今度Authenticなleadershipについてもう少し掘り下げて書きます。

2020年11月14日土曜日

キャリアの目標を決めるっていうのは発散と収束のサイクルなのかも




以前のBlogでキャリアの中期的な目標は仮にでも良いから決めてしまった方が良いという話を書いたのですが、最近色々な人の相談に乗ったりキャリアについて話す機会を頂くにつれて、もう1段ふと考える事があったのでここにまとめて書いてみようと思います。

キャリアについての相談内容は大きく二分される
先日、母校の大学一年生に対して仕事やキャリアについて話すための事前打ち合わせをしていて、先生の方から「大学一年生なので将来何をしたいか分かっていない生徒も多いのでそういったところにもアドバイスを頂けると助かります」という事を言われました。まぁ大学一年生なんてそんなもんだよなぁ。あれ、でも新卒の学生も同じようなことを言ってるし、なんならキャリアをそこそこ重ねているはずのMBAの学生も同じように何をしたいか分からないって言う内容で相談を受ける事が多いです。結果、多くの場合はキャリアの目標がそもそも決まってない。数少ない10%くらいの相談事が具体的な手段のアドバイスが欲しいっていうものだと体感的に思っています。なので、キャリア相談は以下の2つである事が多いです。
  • キャリアの目標は何に設定するのかヒントやアドバイスが欲しい
  • 目標は決まっているけれど、具体的な手段の相談に乗って欲しい
キャリアが進むと目標設定を再度行う必要が出てくる

上記のタイミングで、10年とか働いてもキャリアの目標も設定されてない人がいるもんなんだなぁと思っていたのですが、色々考えた時にそれってサイクルなのかなと思ってきました。キャリアを進めていくと、目線や視座が上がってより多くの選択肢や違う世界が見えてくる事があります。例えば、MBAやマネージャー、マネジメントのポジションに就く等はそういった切り替えのタイミングになるでしょう。新しい世界が見えてより選択肢が増えたからこそ、目標も再度発散して、そこからさらに収束していくというサイクルを繰り返していくのが自然なのかなと思っています。
自分の経験を振り返ってみても、MBA中に様々な国での機会に恵まれぐっと世界が広がり、小さいながらCountry managerの仕事に就いてからは、他社から来る転職案内の案件もマネジメントの案件が増えてきたためさらに世界が広がった気がしています。
話は結構変わるのですが、以前MBAの同級生がいち早くAPAC GMのポジションに就いていて、"General manager is a different league." って言っていたのを感じ悪いなーと思っていたのですが、今は十分理解できます笑

キャリアの目標設定は発散と収束を繰り返すという仮説
言葉にしてみると下記のようなサイクルなのかなと思っています。
  • 目標を設定する
  • 達成した結果、選択肢が広がる
  • 幅広い選択肢を検討し目標を設定する
という事で、結論としてはキャリアの目標は仮でも良いから早く決めた方が良いよねって部分は変わらないのですが、常に収束し続けるだけじゃなくて、キャリアは一個突き抜けるとさらに広がることもあるんだなって事を言葉にして書いてみました。

2020年11月8日日曜日

早く意思決定をする立場に立つ事の大切さ


 今月で今の会社で働き始めてから、一年三ヶ月になります。同時にGMとしては一年二ヶ月程度働いた事になります。もう、本当びっくりするくらい色々あった一年間と少しだったのですが、その中でもチームを率いて意思決定をする立場に就く事の重さを思い知れる期間でした。

前職ではシンガポールでRegional Marketingという本社と各国のチームをつなげて、各国の注力プロジェクトを推進していくという仕事をしていたのですが、そこでの経験と比べると自分が意思決定をするようになってからの経験の濃さは桁違いでした。

なぜ、意思決定者とそうでない人は違うのか

原因を色々考えてみたのですが、結局意思決定者の気持ちになってサポートやアドバイスをするという仕事はあくまで二次的で濃度が全く異なるという事だと思っています。もちろん、コンサルタントや社内で意思決定者の意思決定をサポートする仕事の人たちは精一杯当事者の気持ちになって仕事をしていると思うのですが、結局はどこまで行ってもどこかで他人事だったり、気迫のようなものが違うんじゃないかなと思っています。だからこそ、以前書いたブログの記事に書いたようにアドバイザーとして仕事をしてきた人が意思決定をするマネジメントに職種を急に変えるのはかなり大きなチャレンジになるんだと思っています。

具体的に意思決定者とそうでない人たちで何が違うかと言うと、下記の二点に集約されると思います。

  • P&Lの責任を持つ事(投資と目標の責任)
  • People managerである事(チームメンバーのキャリアや成長の責任
この2つの点が意思決定者の違いだと思っていて、ここの重さが一個一個の経験への真剣さや学びに影響してくると自分では考えています。P&L責任を負っている以上失敗をしたら解雇されるリスクは当然あり、People managerであるからこそチームメンバーへの影響は大変大きいです。

早く意思決定をできる立場に立った方が良い
昔、キャリアの先を行く友人からポジションが人を作る。と言われた事を覚えてますが、本当今は実感しています。意思決定の数を重ねた経験から来る学びの濃度は本当桁違いで、若ければ若いほどその時の変化の大きさは将来大きくなっていくと思います。だからこそ、なんとなく流れに任せてキャリアを選ぶのではなく適切にリスクを取って、より意思決定者に近付けるようなキャリアを選んでいく事に価値があると思います。ものすごい賢い人ではなく、自分のように持っているカードをうまく使ってキャリアを切り開いていく人こそ意識できたら多くの人に役に立てると信じてます。

どういう要素があると早く意思決定をできる立場に立てるのか

こちらは過去の記事からの抜粋ですが、今も同様の事を考えているのでここに再掲しておきます。数年後を考えて時に計算されたリスクを取ってマネジメントの道を開きたい人の助けになれたら幸いです。
会社からの評価が高い
  • 経営幹部育成プログラム等で採用(MBAや元コンサル等で見ます)
  • 幹部候補として採用(スタートアップにある怪しげな採用ではないやつです)
  • 強みやバックグラウンドが大きくフィットした場合
会社がリスクを取りやすい
  • 新しいビジネス/ 子会社等を立ち上げ(社内にエキスパートがいない)
  • ターンアラウンド等社内がやや混乱状態にある
  • 小さい国(東欧、東南アジア、等)