2021年5月30日日曜日

PIP(Performance Improvement Plan) 事後編

 





前回までの記事で、PIP期間中にどういうことが想定されるのかということを書きましたが、それぞれのシナリオごとに考慮したりアクションする内容について書いていきます。PIPシリーズもこれで最後です。

  1. PIP期間を乗り越えて継続的に雇い続ける
  2. PIP期間終了後、目標未達で辞職
  3. PIP期間中、対象者から自主的に辞職
  4. PIP期間中、雇用者から辞職を勧めたり、契約解除したりする

1. PIP期間を乗り越えて継続的に雇い続ける
パフォーマンスが改善したという前提なので、多くの場合問題かと思いますが、対象者は会社から厳しいメッセージを受け取ったので会社に対する信頼を失っている可能性があります。三ヶ月程度は特に注意しケアをしていく方が良いでしょう。多くの会社では誰がいついなくなっても良いようにバックアッププランを作っていると思いますが、PIPを乗り越えたあとでも、事前にに作ったいなくなった場合のバックアッププランは使えると思うので何かのドキュメントに残して整理しておきましょう。

2-4 PIP対象者が会社を去った場合
PIPによりプロセスや理由は置いておいて、対象者が会社を去った場合は色々と行動する事があります。

A. アナウンスメント
まずは対象者の退職について早く適切な理由とともに発表する必要があります。対象者が不確かな情報を伝えたり、“情報通”の社員が間違った噂を広げたりする前に関係者の合意する退職の理由を社内アナウンスという形で出す事で様々な問題が防げるでしょう。

B. 新しい人員配置
この人員配置に関してはPIP対象者のポジションに代わりの人を入れるだけでなく、職務を一度整理してゼロベースでどう職務を切り分けてどう分配していくべきかという視点で考える絶好の機会です。PIPが始まる前に元々作ってあったバックアッププランを見直して実施し、問題なく進むように心掛けます。

C. PIP対象者業務をある程度執行
ケースバイケースですが、一時的に新しい人を雇うなり社内での配置転換を行なっていると思うので、その間自分自身が代行してビジネスが問題なく回るようにより自分自身の時間を使う事を検討します。GMがDirectorやManagerをPIP対象者にした場合、自分が得意でない専門領域の場合は、隣のチームに短期的に手伝ってもらったり、困った時に誰に何を聞くのかという事を含めて実施します。

D. 他チームメンバーに対してミーティング
PIP対象者だった人と一緒に働いていた人に対して、問題ない範囲で事実を説明します。また他の人とはいえ、PIPの実施は心理的安全に悪影響を与えている可能性が高いのでパフォーマンスが問題ない事を説明し、このままのパフォーマンスを続けて欲しいことを再確認して伝える事で、誤解から生じる様々なリスクを防げると思います。

さて、四回に渡って書いたPIPシリーズでしたが、書いてあるのは本当ベーシックな話でもっともっと複雑だし実施している側も数多くの負担がかかります。初めてPIPを実施する人のちょっとした手掛かりになれたら幸いです。

2021年5月23日日曜日

PIP(Performance Improvement Plan) 実施編


さて、三回目になるPIPに関してなのですが、今回は最終回という事でPIP中に気をつけることについて書いていこうと思います。前二回の記事において、PIPを提示したらすぐ辞めてしまう。もしくは辞めてしまう可能性が高いのではないかという意見があったのですが、それについても少し触れようかと思います。


前回の記事でいくつかパターンがあると書きましたが、それぞれについて念頭に置きつつ、基本的にはPIPを乗り越えて求めるレベルまで成長してくれる事をメインシナリオに置いていきます。
  1. PIP期間を乗り越えて継続的に雇い続ける
  2. PIP期間終了後、目標未達で辞職
  3. PIP期間中、対象者から自主的に辞職
  4. PIP期間中、雇用者から辞職を勧めたり、契約解除したりする

PIP中に気をつける事1: 対象者のモチベーションを維持する
PIP対象者のモチベーションが落ちないようにする事をまず大切にします。PIPの対象になるという事は、本人にとってもショックである可能性が高く、立ち向かうのかそのまま逃げてしまうのかは本人によって選択肢が異なってくるでしょう。ただ、PIPは短期的にショック療法的な側面が多い分、心が折れて会社を辞める事を主な選択肢として選ぶ人も一定割合います。対象者のポテンシャルを信じて乗り越えてもらうために様々な方法でモチベーションを維持、増す事を心がける事が大切です。

PIP中に気をつける事2: コミュニケーションは記録を残す
PIPは本人の進退問題が関わってくるので、後々揉める事が通常より高いです。結果後々のトラブルを防ぐために、ミーティングで話した内容を簡単にまとめて送って同意を取っておく。節目となる月次のPIPの進捗状況のミーティングにおいては人事や法務等の同席をするようにしましょう。

PIP中に気を付ける事3: 定期的に改善状況をコミュニケーションする
具体的には週次でのミーティングでアクションアイテムの合意、必要なリソースの確保、仕事の調整等をしたり、月次のミーティングで改善の状況をコミュニケーションしていきます。このコミュニケーションは2つの意図を行うべきだと思っていて、一つは改善がうまくいっている時にちゃんと伝えて良いタレントが流出してしまう事を防ぐ事。もう一つは改善がうまくいっていない場合に本人にその理解をしてもらって期待のコントロールをしていく事です。自分の中ではうまくいっていると思っていたところ3ヶ月後に急に目標未達ですと言われた場合、感情的になり受け入れる事が難しくなってきます。以上のような二つの目的のためにも定期的にフィードバックを伝えていく事が大切です。

PIP中に気をつける事4: 周りへの悪影響がないかしっかりモニターする
PIPの対象になるという事は基本的にパフォーマンスが期待を満たしていないという事だと思います。人によってはPIPを出された事でストレスを自分だけで抱えられず、周りに組織に対する文句を言い始めたりして悪影響を与えたりする人も一定割合で出てきます。PIP対象者がPIPプロセス中にいる事はもちろん他の人に公開はできないですが、それとなく態度をモニターして、必要に応じて対応を取っていく必要があります。もし悪影響が多いと判断した場合は、PIPプロセス中でも早めに対処する事も検討しなければならないでしょう。

2021年5月16日日曜日

PIP(Performance Improvement Plan) 準備編


 前回は導入編という事で、そもそもPIPってなんでしたっけっていう記事を書いてみました。本当は人事の人から専門的な内容を書いてもらった方が良いのですが、マネジメントとして少し表層的なものを分かるだけでも良いんじゃないかなという目的で書いています。
さて、今回から、準備編、途中編、事後編に分けて記事を書いていく予定で第二回目の準備編について書いていきます。

準備編という事なので、誰に対してPIPを行うのか大まかに決まったあとどういう風に進めていくのか、その際に考えていく論点は何かという事についてまとめておきます。

PIPの書類の準備
  • 既存のテンプレート及び法的根拠をHR, Legalと共に確認
複数の国を抱えている方は多いと思いますが、既存のテンプレートを使った場合にPIP対象者が十分カバーされて必要な機能を果たせるか確認します。特に国によって雇用者、被雇用者の権利は異なるため、後ほど問題になるリスクを最小化しましょう。
  • 現状の未達成及び期限内での目標の明確化、定量化
PIPになるためには根拠が必要です。具体的にどういった点が現在の職務に対して不足しているのか、また期間内に何を達成したらPerformenceが改善したと認識するのかについて、可能な限り明確化、定量化しておく事が大切です。初めの頃は仕方ないと受け入れていた対象者も少し時間が経つと様々な事を考えたり、問題が複雑になった時に解釈の余地を残せば残すほど問題が起こる可能性があります。
  • マイルストーンとなるミーティングのセット
二週間に一回かそれ以上にPerformance改善がうまくいっている場合はちゃんとRetentionを高め
、うまくいっていない場合は辞めるための心の準備がお互い整っていきます。また透明性のためにも合意した改善目標において今どれくらいなのか明確に説明して、議論のまとめをメールで送って記録を残しておくようにしましょう。

結果による下準備

PIPを提示するという事は対象者にとって非常に大きなストレスであり様々な事を考えさせるきっかけになります。結果どうなるかは何パターンしかないので事前にどういう状況が起こっても良いよう備えておく必要があります。
起こる可能性としては
  1. PIP期間を乗り越えて継続的に雇い続ける
  2. PIP期間終了後、目標未達で辞職
  3. PIP期間中、対象者から自主的に辞職
  4. PIP期間中、雇用者から辞職を勧めたり、契約解除したりする
という4つのパターンがありえます。急にいなくなった場合、誰がどう仕事の代わりをするのか、レピュテーションのリスクをどう管理していくのか等を考えておく必要があります。パターン3が実は結構多く、パターン4は一番避けたい事態だと個人的には思います。パターン4はPIP期間であるものの態度やパフォーマンスがさらに悪化し、周りのチームメンバーに対して悪影響が出始めたケースなどは、雇用者側からアクションを取る必要が出てくるでしょう。

という事で、事前準備編を書いてみました。次はPIP中に気をつける事を書きたいと思います。

2021年5月8日土曜日

PIP(Performance Improvement Plan) 導入編

 

さて、今日はPIP: Performance Improvement Planについて書いてみようと思います。

マネジメントとして仕事を始めると数多くのチームをまとめつつ結果を出していく必要が出てきます。そうすると当然常に全員が良いパフォーマンスを維持し続ける訳ではなくて、能力と職務が合っていなくてパフォーマンスをうまく発揮できない人も出てくる事が当然あります。

日本語でぱぱっと調べた形だと、PIPはリストラの準備なので注意です等弁護士事務所が書いていたりする事が見られましたが、今回書いている事は日本以外の比較的雇用市場が流動的な場所を前提にしていると捉えて読んで頂ければ幸いです。流動性の高い市場においては、能力が合っていない場合にお互い合意の上、能力と職務が合致しない場合、労働者側に対して早く新しい他の仕事を見つける事ができ長期的には良い面もあるからです。流動性の低い市場で終身雇用等の市場で長期的に雇用されて50歳前後で会社からリストラされて他社に行きようがないということよりも早めにお互い合意をする事でむしろ長期的には良い面があるという考え方もあると思います。

さて、そんなPIPなのですが、多くの場合以下のような構成になっている事が多いようです。

  1. 過去から現在までの評価が期待未満である事の通告
  2. 評価が具体的にどこが足りていないかの詳細な説明
  3. 各項目においての具体的な改善点の詳細
  4. 両者の合意
かなり難しいコミュニケーションになってくるからこそ、正式に書面に残して合意をしていく事が大切です。ジェネラルマネジメントの立場の人はしっかりと法務、人事と連携してすすめる事で万が一の問題を未然に防げるでしょう。

2021年5月2日日曜日

「自分自身の成長」を意識しない方がむしろ成長するのではという話


 2019年8月から今の会社に入って、すぐGeneral Managerの仕事に就いて、そろそろ二年になります。先日先輩への報告メールで色々と今まであった事をまとめていたのですが、本当に色々な事があり、気が付いたら結構成長したのかもしれないなと思う事がありました。

ミスターミニットで働く迫さんのこちらの本にも書いてありましたが、自分の成長ばかり考えているよりも、組織の成長だったり目の前のビジネスの課題に集中する方が結果的に成長するっていう論旨の事が書いてありました。

自分の成長は「事(こと)」に当たることの副産物でしかない。それなのに、副産物を目的にして、囚われていた。おそらく、「マザーハウスを成長させよう!」と口では言いながらアートの学校に通う僕の姿に「ブレ」を感じ、「この人についていっていいんだろうか」と思ったメンバーもいたのではないかと思う。リーダーは、自己成長なんて考えなくていい。そんな自意識なんて、いらないのだ。

この主旨がある程度正しいと仮定した時になのですが、理由とその条件について整理してみたいと思います。理由なのですが、「成長のため」と行動をし始めると、手段が目的化してしまうために、最終的な目的への行動がぶれてしまう事があると思います。迫さんの文章にも書いてありましたが、自意識は周りへのアピールになってしまったりして、実際のビジネス解決に対してぶれてしまうのではないでしょうか。

次に条件なのですが、早く精神的に成熟する方はもちろん素晴らしいと思うのですが、自分のように自意識が高かったりする人(笑)に対しての解決法を書いておくと、自分の成長よりも目の前のビジネス課題を解決しないといけない環境に置く事だと思います。具体的には自分のチームを持ち、チームメンバーの将来を背負うような環境に置かれると自分自身の成長よりも目の前のビジネス課題を解決する事に必然的に集中できると認識しています。

と、考えると別のBlog記事にもちょこちょこ書いていますが、いかに早く責任を持つ環境に自分自身を置く事かが大切になってくるので、20,30代前半の人はいかに早くそういう環境を探して身を投じていくかが大事になってくるんじゃないかなと思っています。