2023年10月30日月曜日

部門間の分断をどのように防ぐのか

   企業が成長し、部門が専門化していく過程で、しばしば各部門は自身の責任範囲内のみに焦点を当てるようになります。これは一見、効率的で専門性の高い業務遂行に繋がるように思えますが、企業全体としては大きな課題を抱えることになります。その一つが、部門間の壁です。今回は、このような状況を打破するための効果的なアプローチ、クロスファンクショナルチームについて掘り下げていきます。

   多くの企業では、各部門が特定の役割と責任を持ちます。この明確な分担は業務の効率化をもたらしますが、一方で、自部門外の事項に対する関心が薄れ、組織全体の連携や協力が失われがちです。この「分断」は、企業の成長を妨げる要因となり得ます。この組織の形を維持する以上は避けられない問題ですが、それ以上にこの組織体系にはメリットが多いと考える企業が多いのでしょう。

   この問題に対処する有効な方法の一つが、クロスファンクショナルチームの形成です。異なる部門のメンバーが一つのチームを形成し、特定のプロジェクトや目標に取り組むことで、部門間の壁を打ち破ります。これにより、多様な視点とスキルを組み合わせ、企業全体としての目標達成を目指します。うまく機能するクロスファンクショナルチームには、以下のような特徴があります。

  • 明確な目標と役割:チーム全体と各メンバーの役割が明確に定義されています。
  • 効果的なコミュニケーション: 開かれたコミュニケーションが行われ、アイデアや情報が自由に交換されます。
  • 多様性の尊重: 異なるバックグラウンドやスキルを持つメンバーの意見が尊重されます。
  • 適応性と柔軟性: 新たな課題や変化に対応できる柔軟性を持ちます。 

シリーズで深掘り このブログでは今後、クロスファンクショナルチームにおけるこれらの特徴について、一つずつ詳しく掘り下げていきます。次回は「明確な目標と役割」に焦点を当て、成功するチーム構築の秘訣を探ります。部門間の壁を乗り越え、組織全体のシナジーを生み出すための今まで考えた事を共有できればなと思います。

2023年10月23日月曜日

MBTIの課題と限界


   さて、最近MBTIと似たようなツールがインターネット上に散見されたり、そもそも学術的ではないMBTIについて批判を目にする機会があったのでそういったことを諸々考えてみてもまぁツールとしては悪くないんじゃない?っていう自分の意見について書いてみようと思います。
   MBTIは、個々の性格を理解し、職場のコミュニケーションや個人のキャリア開発を促進するための人気のツールです。しかし、この理論には学術的な正確さに関する幾つかの批判があります。これらの問題点を認識することは、MBTIをより効果的に活用するための第一歩と言えるでしょう。

1. 信頼性の欠如: MBTIは、同じテストを異なる時間帯に受けると異なる結果が出ることがあります。これは、状況や気分の変化によって回答が変わる可能性があることを示唆しています。

2. 二分的なカテゴリ:MBTIは性格を16のタイプに分けますが、これは人の性格が固定された箱に入れることができるという考え方に基づいています。しかし、多くの心理学者は、性格は流動的であり、多くの場合、スペクトラムに沿って分布すると考えています。

3. エビデンスな欠如:MBTIが提案するタイプや役割は、広範な経験主義的研究に基づいているわけではありません。そのため、その予測の正確性や科学的根拠は限定的です。またいわゆるビッグファイブと呼ばれるツールを使うとエビデンスに基づいていてちゃんとやれば意味があったりするのですが、神経症の項目があったりして実際の現場で実行することは結構難しい面があります。

   それでも、MBTIは自己認識を深め、他者の視点を理解するための出発点として有用です。このツールを使用する際は、個々の結果を絶対的なものではなく、個人の多様性を理解し、尊重するための一つのフレームワークとして捉え、開かれた心でアプローチすることが重要です。
   また、インターネット上では、多くの簡易MBTIテストが提供されており、短時間で「あなたのタイプ」を教えてくれると約束しています。しかしながら、これらの簡易テストはMBTIの本来の価値、つまり個人の内省と他者理解の促進を十分に反映しているわけではありません。
   本格的なMBTIアセスメントは、専門家によるガイダンスとフィードバックが含まれています。参加者は、各性格要素について詳細な説明を受け、自分自身の傾向を反映してタイプを「選択」します。このプロセスは、自己選択という重要な段階を経ることで、自己認識を深め、自分とは異なる他者の視点や思考パターンを理解する手助けとなります。
   この自己選択プロセスは、簡便なオンラインテストでは体験できないものです。それは、個人が自分の性格についてより深く考察し、それがどのように日常生活や職場環境に影響を与えるかを理解するプロセスを提供します。また、他者との違いを認識し、それに対する理解を深めることで、人間関係の質を高め、コミュニケーションを改善する助けとなります。
   結論として、MBTIは問題を抱えつつも自分や他者との違いを理解するきっかけ、自己理解を深め、他者の視点を尊重し、多様性を認める文化を構築するための簡便なツールとしての意味を持ちます。このプロセスを通じて、私たちは単に「誰かがどのように考えるか」を超えて、「なぜそう考えるのか」という深い理解に到達することができると思っています。

2023年10月16日月曜日

MBTIを職場でのコミュニケーションにどう役立てるのか その7

   MBTI理論の“J”(Judging)と“P”(Perceiving)の軸は、私たちのタスクへの取り組み方や作業スタイルに深く影響を及ぼします。Jタイプは計画と整理を好み、Pタイプは柔軟性と即興性に長けています。これらの違いを理解し、適切に活用することで、チームの生産性と満足度を高めることが可能です。

プロジェクト管理における具体的な例を見てみましょう。Jタイプのプロジェクトマネージャーは、期限や目標を明確に設定し、計画通りに進行することに重点を置くでしょう。これに対して、Pタイプのマネージャーは新しい情報やアイデアに対して開かれており、計画の変更や新たな提案を容易に受け入れます。

これらのアプローチは相反するように見えますが、実際には互いに補完し合い、プロジェクトの成功に寄与します。Jタイプが計画と組織性を提供する一方で、Pタイプは予期せぬ変更や新たなチャンスに柔軟に対応する能力を持ち合わせています。

最大のシナジーを引き出すためには、異なるタイプのメンバーからの入力を尊重し、取り入れることが重要です。例えば、戦略会議でJタイプには計画の枠組みを提示してもらい、Pタイプにはその枠組みの中での新たなアイデアや見解を求めることで、バランスのとれた戦略を構築できます。

自分自身がとてもJな性格であるため異なるタイプの人に対するフラストレーションは理解できるのですが、JタイプとPタイプがお互いの強みとスタイルを理解し、尊重する環境を作ることもまた重要です。これを実現する一つの方法は、チームビルディングの活動やワークショップを通じて、メンバー間の理解を深め、互いの働き方を尊重する文化を築くことです。

2023年10月9日月曜日

MBTIを職場でのコミュニケーションにどう役立てるのか その6

   思考を左右するMBTIの"T"(Thinking)と"F"(Feeling)は、組織内の意思決定やコミュニケーションスタイルに影響を与えます。"Thinking"タイプは論理と公平を基軸に行動するのに対し、"Feeling"タイプは調和と人間関係を重視します。両者は対立する傾向があるため、うまく設計をして補完し合うことで組織を強化できる可能性があります。例えば、新製品の開発プロジェクトにおいて、Tタイプのリーダーはデータや事実に基づいて最適な選択をする可能性が高く、一方、Fタイプのリーダーはチームメンバーの意見や感情を重視し、全員が納得し協力する選択をする可能性があります。

   全体的な傾向としての向き不向きを説明しておくと、Tタイプのアプローチは、コスト削減や効率の追求に優れ、リスクを避けながら目標に向かって直進します。対照的にFタイプのアプローチは、チーム内の調和とモチベーションの向上に貢献し、クリエイティブなアイデアや協働を促進します。

   これらをうまく組み合わせることで、チームはともに目標に向かいつつ、メンバーの満足度も保てる組織文化を築くことができます。具体的には、意思決定のプロセスにおいて、Tタイプが理論やデータに基づく選択肢を提供し、Fタイプがそれをメンバーの感情や価値観と照らし合わせ、バランスの取れた判断を下すことが理想的です。

   また、メンバー間でMBTIの理解を深めるワークショップを定期的に実施し、お互いの違いを尊重し学び合う文化を確立しましょう。これにより、コミュニケーションの壁を低減し、スムーズなプロジェクト推進が可能となります。


MBTIを職場でのコミュニケーションにどう役立てるのか その5

   MBTIで言う"S"(Sensing)と"N"(Intuition)の軸がコミュニケーションの品質を高めるキーとなります。Sタイプは事実や詳細を重視し、現実基盤のコミュニケーションを好む傾向にあります。対照的に、Nタイプは未来を見据え、抽象的なアイデアや可能性を探ることに情熱を持ちます。企業のコミュニケーション改善の手がかりとして、Sタイプのメンバーには具体的かつ詳細な情報提供を心がけ、認識と実行のギャップをなくす手助けをできる可能性が高いです。一方、Nタイプのメンバーには、ビジョンやアイデアを自由に発表する空間を提供し、革新的な思考を促すことができる可能性が高いです。

   チーム内でSタイプとNタイプが協力し合うことで、具体性と創造性がバランスよく融合し、革新的でありながら実行可能なアイデアが生まれるでしょう。両者が理解し合うことで、多角的で豊かなコミュニケーションを育み、組織全体を向上させることが可能になります。

   具体的な例を挙げると、開発プロジェクトにおいて、Sタイプのエンジニアは実用的な解決策や実行可能なステップを提案し、その安定したアプローチでプロジェクトを着実に前進させます。一方で、Nタイプのマネージャーは新しい技術やアイデアに目を向け、チームを刺激し、未来のビジョンを探求します。この2つのアプローチが共存し協働することで、プロジェクトは安定と革新のバランスを保つことができます。Sタイプが確実な実装を保証し、Nタイプが進化する技術や市場への適応を促します。

   さて、次回はTとFについてです。