2023年8月27日日曜日

外資系企業の支社は意思決定権がないというのは本当なのか vol.3

   さて前回までの内容を振り返って、じゃあ実際どっちが意思決定権あるの?って話とそりゃ状況によるよね、じゃあどんな状況によるんでしょうか。という事について書いてみようかと思います。

まずは前々回書いた事のまとめとして、外資系企業は人が意思決定できる要素が大きく、日系企業では稟議書を多用して集団で意思決定をする傾向があります。なので(おそらく)ポジションが上がっていったとしても一人で意思決定を下せる要素は日系企業の方が少ない傾向にあるでしょう。次に前回書いた内容として、日系企業は本社に勤務していると仮定すると外資系企業に比べ意思決定できる範囲が大きいです。外資系企業は他の人からの指摘があったように支店や販売店としての要素が強くバリューチェーンにおける意思決定に範囲は狭いと思います。

じゃあどんな人にはどんな環境が適切なのかという事を書いてみようかと思います。

年配になった時に生存競争を勝ち抜いて、意思決定をしたい人

日系企業で長い間耐え、社内での競争を乗り越え一社で意思決定をできる立場に残る人は日系企業に向いていると思います。これはいわゆる今までの日系企業の勤務の人ですが、他に選択肢も多くなっている中この道を選ぶ人もいると思います。商社等だと子会社に出向させてそこで意思決定のトレーニングをしたりするところもあるようで良いとこ取りができているんだろうなと思います。

自分が結果を出し続けるポジションに就ける自信のある比較的若い人

外資系企業は比較的年功序列でなく、日系企業で普通の社員として序列に従って上がっていくよりも能力が高ければ早く意思決定を下せるポジションに就ける可能性が高いために、日系企業で順番が来るのを待つのではなく若い間に外資系企業で切磋琢磨していくという選択をするのは非常に合理的です。また良いとこ取りという意味では、外資系企業で結構昇進した後に、本社機能を持つ日系企業の後継者等にするっと収まる例もあったりしてこれも良いとこ取りをしてるんじゃないかなと考えていてチャンスに見えますね。

ということで、外資系企業の支社に意思決定権があるかどうかというのは結構複雑で良し悪しがあり、それぞれ自分がどういう人物と理解しているのかによって適切な状況が必要そうですね。という一旦のまとめでした。


2023年8月19日土曜日

外資系企業の支社は意思決定権がないというのは本当なのか vol.2


   さて、前回に続いて本当に外資系の支社に意思決定権がないのかという点について書いていきたいと思います。前回は大まかな文化の差について触れたのですが、もう少し細かく見た時の組織構造について書いていきたいと思います。とても大きな主語になっていて、米系企業とか日系企業とか一般化していてちょっと心苦しいのですが、議論のための単純化をしたいきたいと思います。また、日系企業の組織構造については書いていないのは単純に良い例を知らないからです。(また、左は実は日系も実は変わらないんじゃないの?という仮説を持っています。右は多分こんなにクリアになっていないかもしれないですね)

   添付のスライドを説明していくと、多くの企業は部門のGMと地域のGMがいる事が多く、それぞれが責任領域を持ちつつ協力して働いている事が多いです。たまに部門によって、地域内で統合していなかたりとか色々なパターンがあったりしますが、概ねこんなもんだと思います。部門と書いてあるのはメーカーだと商品群である事が多いですね。例えば白物家電部門とか。地域で各部門を統括するリーダーがいる事は効率的だったり各部門間の連携が取りやすかったりするからといったように理解しています。取締役を見ると、各部門長と大きな地域のGM(APAC等)が取締役に入っている事が多い印象です。

   そして、一つの地域にフォーカスして見ると、バリューチェーンごとに意思決定者が異なっている事が多いです。グローバルの部門は開発と生産に必ず責任を持っていて、下流は地域が完全に独立している場合、グローバルの部門が結構意思決定権を地域のGMと共有している場合、そこに広域のチーム(APAC等)が入ってきてさらに複雑さを増す場合などがあります。また、こういった際の意思決定とは投資を含めお金を使う意思決定が任せられている事だと理解しています。例えば自分の経験上では毎四半期ごとのP&Lの数字さえ満たせば人の採用から一切合切自分で決められるポジションにありました。また、これはあくまで例で例えば、生産工場が東南アジアにあるためにAPACの代表が生産の責任者も兼ねている場合とかもあったりします。グローバルで働いていた経験からすると、たまに一つの部門がうまく行かなさそうと判断した地域が他の部門に投資を振り分けるといった事が起こり得るのでいわゆる「本社」だからと言ってコントロールを効かせるのは結構難しいです。

   最初の疑問である外資系企業の支社は意思決定権がないのは本当かという点に答えると、例1の場合などはむしろ外資系企業の方が個人で決められる文化を鑑みた際にむしろ意思決定権があると思っています。これは本当企業によって違って一般化が難しいのですが、一旦スタンスを取るとこんな感じで今回は締めくくります。

2023年8月12日土曜日

外資系企業の支社は意思決定権がないというのは本当なのか vol.1


    たまに「日本にある外資系企業は支社だったり販社的な扱いなので意思決定権がなく、世界本社が多くを決めてしまい、その点日系企業は日本人である事を優位に使って本社で意思決定に近い仕事ができる」という事を聞いたりする事があります。これについて、日本企業の本社で働くという経験はないものの、外資系の支社やAPAC本社で働いた経験は多いために少し整理して何回かに分けて書いてみようかと思っています。こういった事を言っている人の多くは外資系企業で意思決定のできるような立場を経験してなかったり、あまり深く考えずに発言している事が多いように感じ、少し分解して考えてみます。また、前提としてここで書く外資系とは米系の上場している企業を指す事とします。多少乱暴な一般化もあるかもしれませんし、日系企業に関して理解が浅いため、色々と指摘してもらえると嬉しいのと、どちらが優れているという議論ではなくて、意思決定の差にすいてもう少し細かく理解するための議論だと思ってもらえれば助かります。

   いくつかの視点があるのですが、現時点での仮説をいくつか書いてみると

  • 文化面の差
    • 米系企業では個人の意思決定の幅が大きく、日系企業では個人の意思決定の幅が小さそう
    • 文化の差によって、意思決定のスピードに大きな差があり、米系企業ではボスと合意すればサクサク決めて進む事が多いのでむしろスピードの面では有利な可能性がありそう
  • 機能による差
    • 米系はバリューチェーンの上流については本社が決め、逆にP&Lの目標を達成していれば、製造、研究開発以外は現地で意思決定できる事もあり、バリューチェーンで分解する事でむしろ米系の方が意思決定権が強いという面もありそう
  • 個人の意思決定できるタイミングの差
    • 年功序列が強い日系企業の場合、意思決定のできる立場になるタイミングが遅い可能性がありそう
という事で今回は文化面の差について書きます。いくつか論文を読んでみたのですが、日本の企業における意思決定は稟議と呼ばれる仕組みを基準にしている事が多く、稟議においては関係者全員から承認を得る必要がある事が一般的なようです(出典:“Ringi System” The Decision Making Process in Japanese Management Systems: An Overview  International Journal of Management and Humanities (IJMH) ISSN: 2394-0913, Volume-1 Issue-7, April 2015 )また、稟議のまえに事前に話を通しておく事が多いようです。比較すると米系企業においては、権限移譲の幅が決まっておりその範囲内であれば責任者個人が意思決定可能で、取締役会での合意を取り付けるのは相当に大きな意思決定である事が多いです。ここで「大きな」と言ったあいまいな言葉を使っているのは、自分の調査不足です。結果責任者が納得すれば良いので、稟議書といったような正式な文章が必要でない場合も多く、スピードも早くなることが多いです。こういった背景として、米系企業においては責任の所在を明確にする事で失敗した場合にも本人に辞めてもらう等の意思決定ができるからだと思います。

ってなわけで今回は日系企業と米系企業の文化の差について書いてみました。

2023年8月6日日曜日

長時間労働って必要なの?っていう話

    さて、昨日くらいにちょこっとこんなPost(もうTweetではないです)流行っていて自分も意図的に少し巻き込まれたのですが、それについて自分の考えた事をまとめてみようかなと思います。ちょっと仕事関連ってわけじゃないですが、色々考える良いきっかけだったのでまとめておきます。

   いくつかあるのですが、まとめて書いていくと

  1. 時間を投下する事は質を上げるよりも簡単であり、結果的に質的な変化につながりやすく働き始めた初期等は検討する余地がある 
  2. 同じゲームの中で比較すると時間を長時間投下し続けた人と比べて勝つのは実際に難しそう
  3. 仕事以外の成長や幸せを失う事になるため、そのトレードオフが多くの人にとって価値があるのか疑問がある
  4. 長時間労働を長期的にし続けなければいけないという事はそもそも戦う場所の選択を誤っている可能性がある
  5. 長時間労働はマネジメントとしては再現可能性の観点から筋の悪い働き方であり、マネジメントとしての成長可能性に懸念がありそう
という感じになります。一個ずつ説明しておくと
   1については、働き始めた初期などはそもそもの効率の良い働き方などわからない事が多く、沢山の試行錯誤を繰り返す事で結果的に質的な変化につながる可能性があるのではないかと考えています。2は、まぁ元ポストの通りでまぁ同じゲームをしていたら「勝つ」のは難しいかもしれません。3についてはその同じゲームで「勝ち」を達成した時に結果、趣味、家族、仕事以外の楽しみや幸せを失っている可能性が高いため、それってそもそも良いんでしたっけ?っていう疑問が残ります。4については結構肝だと思っているのですが、長時間労働をずっと続けなければいけないという事は戦い方がそもそも間違っている可能性が高くて、戦わずに勝てたり、楽に勝てたりする賢さが本当は戦略というべきものだと思います。長期的な長時間労働って負け戦じゃないでしょうか。5については、プロフェッショナルファームにおいてはあまり関係ないのかもしれないですが、長時間労働を長期に続ける前提でいるとチームメンバーを育てたりコーチングする上で有効な打ち手がないかもしれません。チームメンバーが家族の介護が必要だったり、子育ての負荷が大きかったり、本人が病気をしたりなど必ずしもアクセル全開で踏める状態ではない中で、質的な方向での改善を指導する必要も出てくるでしょう。